沖縄がん心のケア研究会は、がん治療にかかわる様々な方々が、職種や立場を超えて、「がん患者・家族の心のケアの均てん化」を目的として行われる参加・体験型の研究会です

 
 聖路加国際病院精神腫瘍科医長 聖路加看護大学臨床教授 保坂 隆
 
 がん対策基本法では,がん患者がどこに住んでいても同じクオリティのがん治療が受けられること,すなわち「均てん化」が提唱されています。
 私は,臨床精神医学・リエゾン精神医学・サイコオンコロジーを専攻してきた経験から,それに加えて,がん患者と家族のための「心の治療にも均てん化を」という視点も必要だと考えていました。そのために,厚生労働省がん臨床研究事業「がん患者や家族が必要とする社会的サポートやグループカウンセリングの有用性に関する研究」の研究代表者を努めた2007年度からの3年間,グループカウンセリングのファシリテーター養成講座を全国20カ所以上で開催し,全国で合計1270名の医療者が受講してくださいました。そして,その3年間の研究・普及啓発を通して,今後はより具体的に「心の治療にも均てん化を」進めるために,(1)病院モデル,(2)地域モデル,(3)患者会モデル,を想定し実施していく必要性を強く感じてきました。
 そこで,2010年3月で医学部勤務を辞し,まず?病院モデルとして,聖路加国際病院ブレストセンター内にサイコオンコロジー外来を開設していただき,現在進行形でその臨床形態を模索しているところです。今後は別の病院にも展開していくつもりです。そして,?地域モデルとして,真っ先に沖縄をモデル地区として,実効的で,全国に展開できるような研修の形態を模索していこうと思いつきました。
 沖縄を選んだ理由は,上記の研究班で開催したファシリテーター養成講座の地域の中で,医療者や患者さんたちの「熱いもの」を強く感じた所だったからです。4月の第1回の集まりでブレインストーミングの結果,各職種からの症例検討を中心にすることなどを決めて,毎月1回勉強会を重ねてきています。これまでは那覇市で行うことが多かったので,今後は,沖縄県の離島も含めて開催場所を拡大していくつもりでいます。今後とも,皆さまのご出席と,活発なご議論をお待ちしています。
 
 琉球大学医学部附属病院がんセンタ- 医師 栗山 登至
 
 がん治療の均てん化が、がん対策基本法でうたわれてから様々な試みが全国的になされている。しかしながら全国どこでも一緒の事が行われていると胸を張って言えるだろうか。そりゃ、予算が違う、医療者の数が違う、住民の数が違うetc 違うところで同じことをやろうとすれば無理があるのは当然だ。でも、そこで「無理」とあきらめてしまえばそこからは先に進めない。
 はたして心のケアというのはサイコオンコロジーを学んだ精神科医だけのものなのか。一体全国に何人いるのか・・・その幻を求めていても何も始まらないだろう。今、病んでいる人を目の前にしている私たちが、職種・立場を超えそれぞれの経験を持ちより検討し、経験豊富な精神科医からアドバイスをもらう。私たちが地域でできることをまず始めてみる。夜中に気持ちを打ち明ける人に対し、数日後に専門家が面談を持つことも大切だが、つらい時にその場にいるスタッフが基本的な対応ができる事は、患者さんにとってもっと大切なのではないだろうか。
 研究会を始めるにあたりどういう取り組み方をしたらいいのか考えた。サイコオンコロジーの成書はたくさん出ている。もちろん読んでみる。それでできるようになるだろうか?料理本を100冊読んだら料理上手になれるか。恋愛本を100冊読んだらもてるようになるのか。同じである。もちろん本に書いてあることは大切な基礎であり、研究会に参加する時もその程度の知識はほしい。問題はそこからである。経験則を言葉で伝えることは大変難しい。沖縄がん心のケア研究会では、系統だって講義で学ぶというのではなく、経験を持ちより検討し、それぞれが問題意識を持って参加することによって自分にとって今必要な知識を個別に持ち帰るという方法をとってみた。サイコオンコロジーの第一人者である保坂氏の前で、口を開けて待っているのではなく、勝手に保坂氏の引き出しを開けて知識・技術を「お持ち帰り」してしまおうという試みである。
 それぞれが忙しいなか集まるのだから、明日からの現場に活かせるものを一つでも持ち帰ってもらえる会にしていきたい。続けることによって、経験から得られた文章化しにくい知識が,いつの日か一つの形をもって目の前に現れてくれることを信じている。
 
 北山病院 緩和ケア認定看護師 儀間 真由美
 
 看護師は治療や療養、生活の場においても患者さんの一番側にいることが出来る分、患者さんから不安や悩み、苦しみを聴くことも少なくないと思います。時には怒りをぶつけられる事もあるでしょう。
 患者さんの心の痛みを一緒に抱えて、つらくなることはありませんか。患者さんの心を支えたい、寄り添いたい。でもどうしていいのか解らなくなったり、その声に本当に答えられたのか、もっといい返事がなかったのか悩んでいませんか。私もそのような看護師の一人でした。そんな中、初めて保坂先生の講義を受講した時、「これが私の今まで知りたかったこと、求めていたこと」と深い感銘を受けました。きっと参加するとその意味がわかると思います。
 いつでもどこでも誰もが、心のケアを提供できるよう一緒に考えていきませんか。沖縄がん心のケア研究会は、一人一人の経験をみんなの力に変え、共に成長しあえる研究会をめざしています。
 
 のはら元氣クリニック看護師・沖縄県がん患者会連合会役員 阿波連 愛香
 
 2009年5月に行われた『乳がんの啓蒙活動ピンクリボンWITH YOU 沖縄』で保坂先生が講演された《心のケア》。保坂先生との出逢いから、県内の患者会、医療現場、支援団体などと交流の機会を得て、告知、治療、療養、再発、完治、終末医療の現状、経済的、物理的な問題など、患者様の心の悩みも様々な要因や誘因を抱えている現状を知りました。この様々な問題に対して、患者様が『今』と望まれるときに、求められた立場が必要とされた関わりへ最善を尽くし、解決へ寄り添う事が出来れば、心の問題は解消(ケア)されていくのだという場面にも度々、出逢いました。
 様々な立場の誰もが、求められたときに必要な関わりに可能な限り取り組むことが出来るためにも、互いのポジション、適切な介入のタイミングなどを相互理解し、シームレスに架け橋していく繋がりが大切だと実感しています。その均てん化の構築のために、この研究会が活かされていくことに期待をしています♪ 日々がんの患者様や御家族と関わる中、心が健康な患者様や御家族は、病を抱えていても素敵な日々を過ごされていることから、私たちサポートする側は、患者さん自身が自分の心と身体の一番の治療者になれることを、必要とされた場面でお手伝いできたらと思います。
 これからも様々な立場の皆さまが『がん心のケア研究会』に参加されてネットワークで繋がり、立場を活かしたメンターとして、県内の患者様や御家族の心の健康の架け橋となりますように!!! 
 
 那覇市立病院ソーシャルワーカー 樋口 美智子
 
 ソーシャルワーカーは、病気や障がいの治療・療養に関わる経済的問題、利用できる制度、仕事や家族の問題、社会生活や療養先等に関する相談にのっています。その中で常に感じるのは、患者さんやご家族の“不安”であり、患者さんやご家族を取り巻く人々とのコミュニケーション不足です.
 「沖縄がん心のケア研究会」に参加すると、ソーシャルワーカーとして制度を紹介すること、転院先・療養先を決めるお手伝いをすること、医師や看護師とのカンファレンスを設定することなどの過程そのものが、心のケアに繋がることに改めて気付かされますし、様々な職種が患者さんやご家族の治療やケアにどれだけ“心を砕いて”いるかを知ることができます.特に新鮮なのは、各々の専門職の視点で意見や感想を述べ合うことができる場であることです.この対等な立場に立ち、誠実で率直な責任ある“アサーティブなコミュニケーション”が身について、患者さんやご家族とも、またそれぞれの職場でも実践できるようになることが、“心のケアの均てん化”にも繋がるのではないでしょうか。
 自分の時間を割いて、他者の言葉を聴き、自らの言葉を述べることにはエネルギーも要りますが、参加した方それぞれに得ることがある研究会を、みんなで支え合い築いていきましょう。みなさんのご参加をお持ちしています。
 

沖縄がん心のケア研究会